第34回出雲駅伝 中央大学チームエントリー考察

第34回出雲駅伝のエントリー受付が9/20に締め切られ、スポーツ紙や各大学のInstagramなどで少しずつエントリーが発表されています。

全体エントリーの発表までしばらく時間があり単純な戦力比較はまだ難しいところですが、今回は25回大会以来久々の出場となる中央大学エントリーメンバー10名について記していきます。

中央大学 チームエントリー 一覧

前回-
98回箱根6位

5000mPB
上位6名平均 13:44.54

10名平均 13:51.42
上位6名標準偏差 00:09.39
10名標準偏差 00:11.38

※10/2追記
上位6名平均 13:42.14
10名平均 13:48.78
上位6名標準偏差 00:08.41
10名標準偏差 00:10.52

 

千守 倫央(4) 13:58.13→13:49.41
若林 陽大(4) 13:59.08
中野 翔太(3) 13:43.53→13:39.94
湯浅 仁(3) 14:07.76→13:58.32
吉居 大和(3) 13:25.87
阿部 陽樹(2) 13:55.57
東海林 宏一(2) 14:01.97
山平 怜生(2) 13:51.20
溜池 一太(1) 13:47.88→13:46.16
吉居 駿恭(1) 13:43.22→13:40.26

事前の監督コメントからスピードランナーを揃えて戦う旨コメントがあったように、各学年から2名以上とバランスよく、ほぼ万全なエントリーと言って良さそうです。上位6名平均では前回優勝の東国大(13:44.21)・前回2位青学大(13:43.94)にも全く引けを取りませんし、記録のばらつきも小さいです。

ロード職人中澤くん、スピードランナーの山田くん中野倫くん伊東夢くん、PB更新で復活の狼煙を上げた園木くん、男鹿駅伝好走の伊東大くんや、春シーズンからずっと安定している助川くん大澤くん森くんなど、エントリーされなかった選手をカウントするだけでも今期のチーム力の厚さが伝わってきます。

1区8.0km
出雲大社正面鳥居前→出雲市役所・JAしまね前

基本的にフラット気味ですが、出雲大社前をスタート後、県立浜山公園前でのアップダウンが20mほどの高低差があります。例年スピードランナーが揃う1区は、最序盤からの飛び出し等も含め仕掛け所が大事になります。

2区5.8km
出雲市役所・JAしまね前→ゆめタウン斐川前

最も短い5.8km。序盤は徐々に登り、後半は緩やかに下るスピード区間に相応しいコースです。短い区間ですが、1区が秒差で継走されがちなため、例年その流れで順位変動は多くなる印象です。

3区8.5km
ゆめタウン斐川前→JAラピタひらた店前

前半で最も距離が長く、留学生の起用も含め、力のあるランナーが出走します。コース自体は高低差も少なくなだらかに下っていきます。この辺りから暑さも気になってくるところ。前半のポイント区間ではあるのですが、ここ5年ほどこの区間の区間賞獲得チームはいずれも優勝していません。

4区6.2km
JAラピタひらた店前→鳶巣コミュニティセンター前

スタート以降1区2区と進んできた進路と逆、西の方角へ進んでいきます。前半の風と真逆の風を受けることになり、気温と風向きがより一層大事になってきます。また、コースも中盤以降じりじりと登り気味のアップダウンが続く、タフな区間です。

5区6.5km
鳶巣コミュニティセンター前→島根ワイナリー前

4区以上に細かなアップダウンが続きランナーを苦しめます。単純な区間順位で見る以上に差がつきやすく、アンカーへの橋渡し役を務める後半の重要区間と言えます。

6区10.2km
島根ワイナリー前→出雲ドーム前

出雲駅伝はアンカーが最長区間となるため、優勝争い以外も含めて順位変動が激しいです。出雲大社前からは1区と同じコース。浜山公園前のアップダウンも健在です。層の厚いチームは、ここにエースを残して勝負をかけることもしばしば。出雲ドームのフィニッシュ地点、今年はどの大学がゴールテープを切ることになるでしょうか。

5000m 00:13:49.41(2022-10-02)
10000m 00:28:15.40(2020-12-05)
Half 01:02:37(2020-02-02)

最終学年の今期は、強い千守くんが帰ってきました。

学生ハーフは10km通過までかなり攻めた走り、春先の東海大でもその勢いを持続させると、切れ味鋭いラストで1500mを中心に大活躍。関東インカレ日本インカレ共に入賞を果たすだけでなく、男鹿駅伝の最長区間1区でも見事区間賞を獲得、夏合宿でもかなり充実しているように見えました。

元々13分台・28分台・62分台とすべての距離で高い能力を発揮するマルチランナー。好調を維持しているならこれほど心強い選手はいません。

出雲路の距離であればどこも問題なく出走可能でしょうが、今期の活躍を見るとラストスパートが生きる区間、例えば1区2区などが適していそう。男鹿駅伝1区、実質ラスト勝負で後続を大きく引き離したのはしびれました。同じように叩き合いの展開に持っていければ。もしくは本人が希望する箱根7区仮想として、アップダウンが細かい5区を攻略してくれると、チームとして大きな収穫になるかもしれませんね。

若林 陽大(4・主将)

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5000m 00:13:59.08(2021-11-06)
10000m 00:28:42.02(2021-11-24)
Half 01:04:29(2022-07-02)

若林主将も、陸上人生最後の年を非常に良い流れで過ごしているようです。

例年は春シーズン好調も夏前で若干の離脱、それでも秋冬シーズンにしっかり調子を合わせてくる印象が(高校時から)ありました。

今期は出走数こそ限られているものの、山下りのダメージから回復後は全てのレースで安定した結果を残しています。特に兵庫リレカ、関東インカレの10000mでは平地での走力の高さをしっかり印象付けてくれました。

若林主将といえば下りですが、出雲路であればその特性が最も生きるのは3区でしょうか。一方で、箱根6区において下りで稼ぐだけでなく登りからしっかり走れている印象も強いです。要アップダウン攻略の5区、だらだらと登ってからは下る2区も或いはでしょうか。代田修平主将がスターターを務め3位に入った2012年の様な流れで1区もありかもしれません。

5000m 00:13:39.94(2022-10-01)
10000m 00:28:00.86(2022-07-13)
Half 01:04:03(2021-10-23)

チームのみならず学生長距離界を含めて、今期の充実ぶりで言えば真っ先に中野翔くんの名前があがるのではないでしょうか。出走した全てのレースで高い安定感を誇り、5000mでは4度の13分40秒台。また、ホクレンの5000m-10000m中6日連戦で13分40秒台と28分フラット(今期日本人学生最高+中大新記録)のPB2連発-は離れ業と言って良いでしょう。

トラックで凄まじいパフォーマンスを記録した今期ですが、元々ロードを得意とする中野翔くんが、いよいよその本領を発揮する時が来ました。

まず誰もが頭に思い浮かべるのは6区。他大学の強いランナーが来ても真っ向から勝負できますね。逃げる役でも前を追う役でも安心して見ていられます。

コース特性を考えるとやや惜しい気もしますが、前半の要3区も主導権を握るという意味では大いにありそう。出雲路に限って言えば、距離が長くなればなるほど中野翔くんを起用する意味が(比重として)大きくなりますので、他の選手がよほど調子が良いということでなければ、この2区間以外は考えにくいかもしれません。

湯浅 仁(3)

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5000m 00:13:58.32(2022-10-02)
10000m 00:28:47.81(2021-11-24)
Half 01:03:57(2021-10-23)

箱根9区の激走で周囲を驚かせた湯浅くんですが、その後の活躍も主力と呼ぶに相応しいものです。

フルマラソン挑戦を挟んだため出走数こそ控えめですが、特に関東インカレ終盤で自らレースを動かして入賞目前の快走は見事でした。ホクレンの連戦も苦しいところで大きく下がらず、しっかりとまとめています。

出雲路の距離は全区間彼にとって短すぎる気もしますが、敢えてということならアンカー6区が最も適していると思われます。陽射しの強い箱根路9区を序盤からほぼキロ2分57秒ペースで押し切ったことを考えると、起用が後半であればあるほどアドバンテージが出てくるのではないでしょうか。そういう意味では気象条件を見ながら4-5区のいずれかも可能性としてはありそう。

5000m 00:13:25.87(2020-12-04)
10000m 00:28:03.90(2021-12-04)
Half 01:01:47(2020-10-17)

衝撃の箱根路1区区間新からはや9ヶ月ほど、吉居大くんがロードに帰ってきました。

今期アメリカ遠征前後のパフォーマンスは昨年以上に良かったのですが、日本選手権を前に怪我で一時離脱、ホクレン千歳5000mをわずか2週間ほどの立ち上げで快走すると、その後も離脱で夏場の距離走はあまり積めなかったようです。

それでも8月後半以降はInstagramを通して元気に走っている様子が見られます。今後は節目節目の駅伝を利用して距離対応をしていくことになるでしょうか。出雲路の距離については、現状どこでも充分なパフォーマンスを示してくれるのではないかと思います。

出走するなら得意のヨーイドン1区、秒差で渡った襷を一気に前へ運ぶ/突き放す2区、リードを広げるかビハインドを一気に取り戻すかの3区、と前半区間が最も有り得そうです。少なからず他校の区間配置にも影響を与える強力な選手なので、裏をかいて・・・という配置も全く無いとは言えないですね。まずは現状を確認する上で、10/1のアスレチックチャレンジが楽しみです。

ファンとしては、スタンダードに1区2区あるいは2区3区で兄弟リレーが見たいなと思います。

阿部 陽樹(2)

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5000m 00:13:55.57(2022-04-09)
10000m 00:28:37.35(2021-11-24)
Half 01:02:54(2022-03-13)

昨シーズンは各種主要大会で安定的に活躍、持ちタイムも次々と更新し、極めつけは箱根の難所5区の快走で学生長距離ファンに強くその存在をアピールしました。

今期も勢いそのままに学生ハーフではチームトップ、関東インカレ10000mでも入賞を果たします。ホクレンの連戦では珍しく1戦目5000mで失速しますが、すぐ次の10000mではしっかり立て直す強さも。また、夏場の実業団合宿を終えた日焼け姿から、相当な練習を積んだことが伺えます。

昨年度の全日本2区は抜擢、と言って差し支えない状態でしたが、主力として臨む今期はまた印象も変わってきそう。序盤の1-3区はどこでもありそうですし、ラスト手前の登りが待つ4区、中盤で浜山公園前の登りがある6区なども考えられそうです。

5000m 00:14:01.97(*)
10000m 00:29:24.19(*)
Half 01:03:58(2021-10-23)

東海林くんも昨季から主要大会への参戦率が高く、時節跳ね返される場面がありつつも箱根予選会ではポテンシャルの高さを示してくれました。

今期は序盤やや出遅れるものの絆記録挑戦会の5000mで復帰、その後も出走数は控えめなものの、男鹿駅伝最長区間1区出走、函館マラソンの早い入りなど首脳陣からの期待の高さが伺えます。

実績も充分、練習はしっかり積めているようですしあとは駅伝での結果を出すのみですね。三大駅伝デビューとなれば、比較的距離が短い2・4・5区が候補になってくるでしょうか。暑さの残る箱根予選会、風が強い中での中大記録会での粘走の印象が強いため、後半のタフな区間でもしっかり走ってくれそうです。

5000m 00:13:51.20(2022-07-09)
10000m 00:29:21.22(2021-12-31)
Half 01:02:48(2022-05-22)

山平くんも同期の2名と同様に、入学後から主要大会への参戦率が高く、特に5000mは大きな大会でも跳ね返されず走破していました。一方、短期間で2本揃える・或いは10000m超の距離ではやや苦戦気味で秋冬シーズンへ向かいます。

しかし年末の早大記録会で10000mのPBを更新すると、日本学生ハーフで快走し距離の不安を一掃、関東インカレハーフでは中盤自ら先頭を引くなどレースを動かしつつ、かつ後半も順位を上げる素晴らしい走りで見事表彰台へ。2年時から真価を発揮する、実に中大らしい伝統的な成長曲線を描き駅伝シーズンへ挑みます。

ハーフ仕様と思いきやホクレンでは5000mPBも大幅更新とスピードも申し分ありません。前半起用もありそうな中で敢えて4区5区、暑い時間帯のタフな区間で、関東インカレハーフの再現といきたいところです。他校からしてもこのスピードを持つ選手が4-5区にいるとなれば脅威ではないでしょうか。

5000m 00:13:46.16(2022-10-01)
10000m 00:29:21.62(*)

今期入学者の中で5000mPBが最も早い溜池くん、入学後も非常に順調に成長してくれました。

ルーキーながら今期ここまでエントリーメンバーの中で最も多くの出走回数をこなし、かつ全てで安定しています。特に大舞台での5000m勝負レースを、1年時からここまで安定してこなした選手はあまり記憶にありません。ただ安定しているだけでなく、夏以降はホクレンで大幅PBも更新、日本インカレでも入賞目前と力がついていることを証明してみせました。

近畿地区駅伝、都大路1区を見るとスターターに抜擢したい思いもありますが、流石にその辺りは強い先輩方に譲るとなるでしょうか。単独でペースを刻めかつ全く崩れない走りを考えると、4区ないし5区を任せたいところです。ただそうするとこの区間の候補者が多くなりすぎてしまいますが…。

5000m 00:13:40.26(2022-10-01)
10000m 00:28:11.96(*)

同じく今期ルーキーで溜池くんと共に高いパフォーマンスを示してきた吉居駿くんを、最後に紹介します。

入学後に出走した全てのレースでキロ3分越えは皆無、大舞台でも果敢に前方に位置取りますし、離されても粘りそして恐ろしく切れるラストスパートでいつの間にかこの位置に…というレースは一度や二度ではありませんでした。

もともと自他共に認める距離不安が少ないルーキーですので、チーム事情に応じて1-5区まで全てが候補に入ると思います。
(6区も可能性0では無いと思いますが、外しました)

吉居大くんの箇所にも記しましたが、兄弟リレーの実現が最も有り得そうな駅伝がこの出雲と考えています。1-2区ないし2-3区、それ以外も何らかの形で実現すればと思います。

どう組んでも強いが、どう組むか

各種主要大会のチームエントリー時点では、少なからずあの選手が間に合わなかった…などの情報が見え隠れするものですが、今大会に限ればそういったことがほぼ無いように思います。

どのような出走の形でも強いと思いますし、それだけにどのようなオーダーを組むか非常に楽しみです。

唯一気がかりなのは10/1のアスレチックチャレンジに中野翔・吉居大・吉居駿・溜池くんがエントリーしていること。このメンバーが全員出走とも読めますし、短期間で全員2本揃えるのは…と、出走を控える可能性もあります。

監督が外向きに出しているコメントをそのまま受け取れば、勝負は全日本から。するとアスレチックチャレンジ→出雲と2本揃えるのもそれ以降を視野に入れ…とまで考えるのは邪推でしょうか。

いずれにせよ第25回大会以来の出雲路、まずは大舞台を楽しみそしてできれば上位戦線を賑わしてもらいたいものです。

※10/2追記
出雲路エントリーメンバー10名は全員10/1-2にかけて出走しましたね…。そのうち5名がPB更新と勢いは確かです。誰が走っても短期間で2本揃える強さが要求されますが、この勢いを持続させてくれるものと思っています。