第97回(2021)箱根駅伝予選会 中央大学チームエントリー考察

箱根駅伝予選会、開催まではや一週間となりました。 改めまして、中大のチームエントリーについて見ていこうと思います。

基礎データ

氏名資格記録5000mPBHalfPB前回大会
吉居 大和(1)28:35.6513:28.31  
大森 太楽(4)28:35.6614:28.991:04:299区10位
三須 健乃介(4)28:36.6514:25.101:03:47予192位
三浦 拓朗(3)28:40.3013:53.911:03:51予35位、3区12位
池田 勘汰(4)29:06.1914:00.371:02:38予51位、4区11位
加井 虎造(4)29:08.0914:09.481:03:07 
川崎 新太郎(4)29:08.5614:16.611:03:26予124位、2区17位
森 凪也(3)29:09.5713:56.741:03:58予15位、7区12位
手島 駿(3)29:24.9714:18.511:03:52 
畝 拓夢(4)29:25.9814:12.261:02:59予25位、5区9位
矢野 郁人(4)29:43.4914:39.921:04:31予105位、8区16位
園木 大斗(1)29:48.6414:17.98  
湯浅 仁(1)30:03.9114:27.02  
中澤 雄大(2)(0:14:28.50)14:21.51  

10000m資格記録
10名平均 1位 28:59.16
12名平均 1位 29:06.98
10名標準偏差 6位 00:19.18
12名標準偏差 7位 00:24.76

資格記録以外にも中澤くんは高校在学時に10000m30分30秒台のPB、園木くんは6月の非公認タイムトライアルにおいて29分11秒の好タイムで走破しています。

資格記録の10名・12名平均はトップ、また記録のばらつき具合を示す標準偏差も上位で、ばらつきが少ない≒層の厚さを客観的に示す結果となっています。
更に、ハーフマラソンの10名平均も63分40秒と高水準で出場校中トップの成績です。

以下、好材料と懸念材料を自分なりに列挙していきます。

春シーズン以前から全体的に好調

まず、10000m資格記録のほとんどが直前ではなく春先の3月に記録されたものであり、その後も数少ない記録会やタイムトライアルでチーム状態の良さを伺い知れる点です。

昨年度も持ちタイムは出場校中トップだったのですが、直前の好条件だった中大記録会での記録の寄与が大きく、前回予選会本番では想定外の暑さに苦戦する形となりました。
上記の例に限らず、直前の記録会の良し悪しはその時点でのチームの狙いやピーキングの問題が絡み、額面通り受け取ることがなかなか難しいです。

今回の出場メンバーについては、逆に直前の記録会出走がほぼ皆無ですが、春先から好調だったチームの主力がほぼそのままエントリーされたのは、シーズンインからの良い雰囲気をそのまま維持できている証左と考えています。

西湖ロード上位8名の選出

「直前の記録会結果を額面通り受け取りづらい」のは、当然ながらそれらがトラック10000mのタイムが多いことも意味しています。
今年度は、夏シーズン最終盤に西湖ロードでのタイムトライアルが行われました。レースの全容は不明なものの、ここで上位に入った選手たちは皆エントリーされています。

更に注目すべきはフィニッシュ順や間隔で、トップの中澤くんから8番目の矢野くんまでは手元計測で50秒を切る程度です(上記Instagramの画像3枚目参照)。

西湖でのロードは通常10マイルでのTTが多く、少なくとも今回もそれ以上の距離で実施されていると推測されます。10マイルでもハーフでも、或いはそれ以上の距離で長くなればなるほど、上位8名が1分以内にフィニッシュした意味は大きくなります。
(かといって、極端な話フルマラソンでの選考だと1分以内フィニッシュの意味は薄くなる(≒そもそもペースが遅い)でしょう。ただ、それはまずあり得ないと断言できます。)

仮にハーフマラソンだとすれば、先頭のタイムにもよりますが50秒以内で8名フィニッシュというのは、95回大会駒澤大の圧倒的な1位通過に匹敵する振れ幅の小ささです(チーム内2位と9位が40秒程度)。
10マイルとしても、ハーフマラソン換算で8名が1分強の間隔でフィニッシュ予想となり、いずれも高水準です。

その上、ロードに出走すれば確実に安定的な好タイムで走破する、駅伝主将の畝くんが7位という点も大きいです。
公式のハーフで65分台/キロ3分5秒ペースを越えたことが無い畝くんを基準とするならば、合宿中の追い込みや疲労はあろうとも、少なくとも一定以上の水準で走れていることは確実でしょう。
(しかも彼の公式戦唯一の65分台は、豪雨悪天候のオーストラリア・ゴールドコーストマラソンというおまけ付きです。)

調子が上がっていれば誰が出ても良さそう

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上述の8名以外のインカレ組(三浦くん吉居くん)や4年生(大森くん川崎くん)+学内TTで仕上がりの良さを見せた森凪くんも同等或いはそれ以上の実力を持っているため、

「予選会でチーム1位から全員1分以内にフィニッシュ」

…が本気で実現する構図すら浮かびます。

また、湯浅くんも7月時点の西湖マイルで上級生に混じり49分台フィニッシュしており、本格的な夏を迎える以前に既にハーフ65分を切ろうかというポテンシャルを有しています。

14名の中で調子が上がってさえいれば誰が走っても問題ないのではないか…とすら思わせるのは、選考や人選にロードレースを重視した成果と言えそうです。

※川崎くんは自身のブログで夏合宿後半の怪我に言及していますが、もともと独特な調整や出走の色が濃い選手と把握しているので、エントリーされた以上は問題なかろうと判断しています。

夏合宿が例年通りではなかった

一方、懸念材料もあります。
雑誌掲載の情報なので最低限の言及に留めますが、少なくとも夏合宿は例年のようには行えなかったようです。
とはいえ度々西湖へは出向いているので、大人数+地方を跨いだ遠征は困難だったということでしょうか。
同じく夏合宿実施困難だった早大の例をWeb記事で見る限りでは、やはり距離を踏むという点で夏合宿非実施の大学は割を食っている印象です。

ただ、吉居くんの9月29日付月陸オンラインの取材において「量を減らした25km走実施」への言及があり、距離走そのものが行えていないというわけでは無さそう。この影響は予選会・はたまた箱根駅伝本戦にて蓋を開けてみなければ分からない所です。

(全くの別件ですが、有料雑誌掲載の詳細な取材情報をブログに載せている方が、当方TwitterのTL上に散見しています。同じブロガーとしてもあまり良くは思いませんので、もし本記事をお読みになっていたら無料/有料の線引や、適切な引用について再考下さればと思います。私もこの辺りはもう少し勉強します。)

悪コンデイションを跳ね返せるか

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選外となった93回予選会や前回の96回予選会、また全日本大学駅伝の予選会を見た限りなので客観的な評とは言い難いですが、「暑さや強風と言った悪コンディションには、どちらかと言えば強くない」
とは言えようかと思います。

10月10日現在、立川市の17日予報は雨のち曇りで最低気温、最高気温とも20℃を切りそうとごく平年並みかやや過ごしやすい条件です。

このままで推移すれば…と思いながらも、気温の割に直射日光が強い日などもありますので、いずれにせよ好条件悪条件関係なく実力を出せることを祈るばかりです。

予選会を苦手としている

上述の悪条件とも絡みますが、近年予選会に回ってからの成績は

90回→12位(通過)
91回→7位
92回→8位
93回→11位(選外)
94回→3位
95回→8位
96回→10位

…と、総じて中位ないし下位が多数です。
資格記録の平均値が高い割に順位が悪く、予選会についてはどちらかと言えば苦手な大学と称して良いでしょう。
予選会の順位高→本戦の順位高とは必ずしもならないだけに、ここも難しい所ですが。

それでも期待したい今大会

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ただ、95回大会駒澤大学のように、傍目にも圧倒的な戦力を有している大学が当然のように予選会1位通過→本戦上位を獲得する例も当然ながらあります。

ライバル校も強力なので圧倒的な1位通過が絶対…とは決して思いませんが、客観的に評価されている層の厚さや記録の良さに見合った結果は、特に今回は求められると考えています。藤原新体制のある意味集大成の1年です。

全日本大学駅伝の選外に、選手関係者やファン、それぞれが思うところも多いかと思います。
対外的な公式戦の場で、まずはその憂さを一つ、晴らしてくれることを期待します。